元旦にNHK Eテレで放送していた「2000年を生きる 塩野七生と高校生の対話」を録画しておいたので観ました。
年末年始は特番が多くてリアタイで視聴できないことが多いです。
それで録画を多用するのですが、これもその一つ。
しかも直前に予告で見て「あ、録画しとこ」と軽い氣持ちで録画したものでした。
いやぁ、観てよかった!
高校生だけではなく、私のような大人が見てもものすごく氣づきの多い番組だったのではないでしょうか。
免疫をつける
塩野七生さんはこんな人(Wikipedia)
今回の講演は、塩野さんの母校、学習院大学の付属高校の生徒が出した手紙がきっかけで行われることが決まったのだそうです。
番組冒頭の塩野さんから一言。
「免疫をつけてください」
免疫とは耐性と言い換えてもいいのかもしれません。
挫折して考える。
壁にぶつかったから考える。
何度も壁に突き当たるたびに慣れてきます。
それを塩野さんは「免疫」という言葉で表現されていました。
挫折してくじけてしまうばかりではなく、考える。
なぜ挫折したのか、本当にどうしたいのか、今できることは何か。
他の人の考えではなく「自分」が考える。
これが大切だと塩野さんはいいます。
男は女に対する免疫をつけてくださいね、女は男に対する免疫をつけてくださいね。
そんなふうに高校生に向けて話す塩野さんのチャーミングなこと!
とても80歳を超えているとは思えません!(褒めてます)
私たちが日常でおろそかにしてしまっていることをさらっと、でもしっかりと言葉にしてくれている感じがしました。
まずやってみて経験を積む。
高校生との対話だからというのもありますが、塩野さんが何度も口にしていたのは「まずやってみること」だったと思います。
「できるようになってからやる」のではなく
「やってみて初めて見えてくる」ものがある
そこを大切にされているし、経験として伝えたいのだと感じました。
やってみてうまくいくときもあるでしょうが、壁にもぶつかるだろうし、挫折も味わうはず。
そのときに自分が考え抜く。
他人の言葉などを取り入れつつも惑わされず、自分で試行錯誤して免疫をつけていくことが自分に力をくれると伝えてくれています。
イタリアに住んでいる塩野さんから見て、今の日本は「できるようになってからやろうとしている」ように感じると憂いていました。
正しいことはほぼ無いと思う方が精神衛生上よろしい
なぜ自分がこのことに納得できないのか?
それを知ることも大切。
「生きづらいとよく聞くけれど、それは自分で生きづらくしているのだと思いますよ」とも言っていました。
それは一つの視点しか持っていないから。
塩野さんは虫の視点と鳥の視点の両方を持ちなさいと言います。
ミクロの視点とマクロの視点。
この複眼的視野を持つことで、どんな仕事に就こうと、どんな場面だろうと切り抜けられるし、楽しめると言っていました。
これは私が長年感じてきたことでもありますし、ここ数年で強く体感したことでもあります。
目の前のことだけにとらわれると辛く感じてしまったり、嫌だなと思うこともあったりします。
ですが上空から俯瞰してみると、もっと別の意味が見えてきたり、違うつながりが見えてきたりするのです。
どちらの視点も持つことで物事が平面ではなく立体的に感じられるようになります。
塩野さんは、正しさも唯一絶対の正しさなんてものはほとんど無いと思ってくださいと言っています。
光を当てる方向によって見え方が変わるのだから、囚われない方がいいのだと。
正しさを追い求めると苦しくなるから、そんなものはほぼ無いと思った方が精神衛生上よろしい、だそうです(笑)
正しさではなく本質と流れを見極める
思わず笑っちゃいましたけど、ホントに同感です。
人それぞれが思う正しさがあります。
それはあっていい。
でもそれは人に押し付ける、強制するものではないと思っています。
強制は虫(ミクロ)の視点なので、私が!俺が!の軋轢を産みます。
そして従わざるを得ない人が苦痛を感じてしまう。
この虫の視点も持ったまま、視座をもっと高みに移して鳥(マクロ)の視点で見ると、お互いの関係性やどこに結論を持っていけば良さそうかなどの流れが見えてきます。
正しさではなく本質と流れを見極める。
その方がよほど大切ではないかなと感じます。
塩野さんの言う「免疫」はへこたれない忍耐力も意味するし、継続していく情熱も内側に秘めているし、何よりも自分自身を鍛えて育てていく愛と力をも込めた言葉なのかなと感じています。
この対話の時間を、この時期に持てた高校生が羨ましいです。
その言外の意味を汲み取っていてほしいなと思います。
私を含めた大人も、自分自身を今一度振り返る必要があるなと感じた時間でした。